衰の話
衰の話(過去ではない←←)
「ひまだなあ…」
深夜2時を過ぎた頃だろうか。
彼女-----衰と呼ばれる少女は自室のイスに座り、ポツリ呟いた。
彼女の睡眠時間は2、3時間あれば十分。だが、午前中に二度寝してしまったがために目が冴え、眠れないのだ。
「外に出よ…」
法律違反だけど、と小さく付け足す彼女の目にはいつもの、皆に見せるような笑顔は無い。
生気を抜かれた様な虚ろな目。
こんな深夜に外を、しかも裸足で出歩く人間など、他に-------いたとしても見回りの警察か、たむろしている若者ぐらいしか(勿論靴は履いている)-------いないだろう。
ひた、
と、コンクリートの地面が微かな音を立て、闇に吸い込まれるようにして消えてゆく。
まだ蝉が鳴いているといえど季節は秋。
暗く、ひんやりとした空気が彼女を包み込み、心地よい。
「ー…♪」
人気の無くなった通りをあちらこちら歩き回っていると、まるで自分がここの支配者になったように錯覚する。
ちょくちょくこの様な事をするが、こうするととても気分が落ち着くため『記憶消失』の不安が和らぐ。
精神安定剤の回数が週に数回程度で済んでいるのはこれもあるのではないか、そう考えることも。
しばらくこうしていると2時間程経つこともしばしばある為、もと来た道を再び引き返し、アジトへ向かう。
さあ、いつもみたいに皆を叩き起こさなくっちゃ!
数名には怒られるけど。
少女は今日も、
誰にも気づかれないように、
悟られないように、
ひっそりと、
仮面を被る----------------