溺れる
今日も学校明日も学校。つまらない。誰かに何か言われてないかが気になって居心地の悪い教室で席に着く。
今日は放送朝礼だ。校長の話は長くて気が滅入る。
いつも通り担任が来て、朝礼が始まり、放送が鳴り出した。
「じゃあ今から放送朝礼だから机を綺麗にしてー」
放送だから顔とか机が見えるわけないのに片付ける必要なんてあるのかよ、とか思いつつ本を鞄にしまう。あんな長ったらしい話を聞く気なんて毛頭ない。
「えー、皆さんおはようございます」
ああ、始まった。今日は何を考えよう。
***
ある程度校長の話が進んだところでふと、「溺れるってどんな感じなんだろう」と思った。元々想像力には自信がある方だ。想像してみよう。
と、イメージし始めた時だった。
「…!?」
リアルに口や鼻から海水が流れ込んでくる感じがした。鼻の奥と目が海水で濡れて痛くなる感じ。少しずつ肺に海水が入ってくる気がして思わず咳き込みそうになって我に返った。
今は朝礼中。苦しみから解放して欲しくて思わず手を伸ばしたくなる。だけどそんな事、傍から見たら変人だ。
とか我に返っても苦しいものは苦しい。だんだん息が出来なくなって…
やばいやばいこれは想像だ。ただの想像だ。現実じゃない。
そう自分に言い聞かせても苦しみは消えず。
駄目だ。息ができないやばい溺れ__
キーンコーンカーンコーン…
助かった。
校長の長ったらしい話が終わると共に、ガタガタ音を立てる椅子の音に混じって息を吐き出す。
「…っは、」
息苦しいのが無くなった。落ち着いてもう一度席に座る。
死にたい。そう思ったのはしょっちゅうだ。
でも。
「溺れ死ぬのだけは、ごめんだ」
そっと呟いた。